退去の連絡を受けてから次の募集を始めるまでに、思ったより日数がかかってしまう。賃貸オーナーさまや管理会社さまにとって、気になるところではないでしょうか。日数が延びる原因は、工事そのものの長さだけとは限りません。「立ち会いの記録があいまいで、負担の話がまとまらない」「見積りが部屋ごと・負担ごとに分かれておらず、発注の判断に時間がかかる」といった確認待ち・手配待ちの時間が重なると、そのぶん空室期間になります。この記事では、退去立ち会いから募集開始までの流れを、立ち会い前・当日・見積りと発注・工事中の4つに分けて、段取りの実務として整理します。富山県で原状回復のクリーニング・内装・補修を自社で施工している新和工業はうすりぺいるがまとめました。
なお、どこまでが入居者さまの負担になるかという線引きそのものは、賃貸の退去費用はどこまで負担する?原状回復の線引きを解説で説明しています。この記事では「線引きの話し合いを、どう早く・食い違いなく進めるか」に絞ります。
全体の流れ:国交省ガイドラインの手順に沿って考える
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」には、原状回復の費用算定の手順をまとめた図(図5)があります。図は契約時・入居時・退去時(立ち会い)・退去後の段に分かれていて、退去の連絡から先は、おおむね次の順に進みます。
- 退去の連絡(連絡時期は契約書で確認)
- 退去時の立ち会いで、物件の状況を確認(対象箇所、汚損・破損の状態)
- 確認した傷みを、入居者さまに原状回復の義務があるもの(故意・過失等による損耗)と、ないもの(経年変化・通常損耗)に分ける。義務がある部分について、修繕する範囲・方法と負担割合を検討(経過年数の考慮を含む)
- 退去後に、見積費用の確認と合意
- 精算(請求書の送付・確認)
図では、義務がない側(経年変化・通常損耗)は負担割合の検討には回らず、そのまま精算へ進む流れになっています。どの傷みがどちらに当たるかの考え方は、原状回復の線引きを解説した記事をご覧ください。
空室期間を短くするには、この順番そのものを飛ばすのではなく、各段階で次の段階の準備を先にしておくのが近道です。以下、段階ごとに見ていきます。
立ち会いの前にそろえておくもの
退去の連絡が来てから立ち会いの日までに、手元にそろえておきたいものは次の3つです。
▶ 契約書と、原状回復の条件(特約)
ガイドラインの手順図では、「契約内容の確認(原状回復条件(特約の有無を含む))」は契約時の段に置かれています。退去のときは、そのとき取り決めた条件が話し合いの前提になるので、特約の有無と中身を立ち会いの前に見直しておきます。
▶ 入居時の記録(チェック表・写真)
ガイドラインは、入居時と退去時にチェックリストを作り、当事者が立ち会って部位ごとの状況を十分に確認することが必要であると考えられる、としています。退去時は、入居時に記入した状況をもとに確認する形です。入居時の記録を立ち会いの場に持っていけるかどうかで、話し合いの早さが変わります。
▶ 前回の工事の記録(いつ・どこを直したか)
ガイドラインの確認リスト(例)には、部位ごとに「交換年月」を書く欄があります。負担割合を考えるときは経過年数を考慮するため、クロスや床をいつ張り替えたかが分からないと、そこで話が止まりがちです。前回の請求書や工事の写真を探しておくと安心です。
あわせて、工事を頼む業者にも退去日が決まった段階で一報を入れ、現地を見る日の見通しを伝えておくと、立ち会い後の見積りまでの待ち時間を詰めやすくなります。
立ち会い当日の記録の取り方
ガイドラインは、損耗の箇所や程度を平面図に書き込んだり、写真を撮ったりといった目に見える方法を併せて活用することも重要だとしています。損耗の箇所や程度をよりわかりやすくし、当事者間の認識の差を少なくするためです。また、こうした記録は、後日トラブルになった場合にも証拠資料になりうるとしています。
写真や記録を業者に送るときは、入居者さまの氏名・転居先、私物や郵便物などが写り込まない形にしておきましょう。写真は「撮った枚数」より「あとで誰が見ても同じ場所・同じ状態だと分かるか」が大事です。立ち会いで意識したい撮り方を表にまとめます。
| 撮り方 | ねらい |
|---|---|
| 部屋全体 → 壁一面 → 傷の寄り、の順に撮る | 寄りの写真だけだと、どの部屋のどの壁か分からなくなる |
| 傷やシミの横にメジャーを当てて撮る | 大きさが伝わり、補修か張替えかの判断材料になる |
| 入居時の写真と同じ位置・同じ向きで撮る | 入居時からあったものか、あとからできたものかを比べやすい |
| 写真の番号を、平面図やチェック表の該当箇所に書いておく | 写真とチェック表が結びつき、見積りの行とも照らし合わせやすい |
| 「傷みがない」所も部屋ごとに1枚ずつ撮る | 工事が要らない範囲の記録になり、次の入居時の記録にも使える |
富山の冬は日が短く、夕方の立ち会いでは室内が暗くなりがちです。電気が止まっている部屋では照明も使えないことがあるので、冬場の立ち会いは明るい時間に設定するか、ライトを持って行くと、傷の状態が写真にはっきり残りやすくなります。
見積りと発注は「分けて」出してもらう
立ち会いのあと、発注の判断が長引く原因の一つは、見積りが1つの金額にまとまっていて、どこを誰が負担するのか、どこを今回やるのかを切り分けられないことです。
負担の話し合いに使える形にする
ガイドラインには「原状回復の精算明細等に関する様式(例)」があり、対象箇所ごとに工事費用を出したうえで、「賃貸人の負担」と「賃借人の負担」を分けて記入する形になっています。業者の見積りも、箇所ごと・工事ごとに行が分かれていれば、この様式に当てはめやすくなります。反対に「原状回復一式」の1行だけだと、負担の話し合いに使える形に組み直すところから始まってしまいます。見積書の行の読み方はリフォームの見積書はどこを見る?相見積もりで比べる5つの項目で詳しく説明しています。
なお、負担割合を決めるのは契約内容と当事者間の話し合いで、工事業者が決めるものではありません。当社も、工事の内容と金額を分けてお出しする立場でお手伝いしています。話し合いがまとまらないときの相談先は、原状回復の線引きを解説した記事で紹介しています。
複数戸を同時に進めるときは部屋ごとに分ける
同じ建物で退去が重なったときは、現地確認をまとめて1回で済ませると日程を詰めやすくなります。ただし見積書と発注は部屋ごとに分けておくのがおすすめです。入居者さまとの精算は部屋ごとに行うため、まとめた見積りだと、あとで部屋別に按分し直す手間が出ます。部屋ごとに分かれていれば、話し合いがまとまった部屋から順に発注する、という進め方もできます。
工事中にしておくと募集開始が早まること
▶ 完了予定日を先に決めて、募集の準備日を逆算する
工事の完了予定日が分かれば、募集用の写真を撮る日や内見を受け付け始める日を前もって決められます。募集用の写真は、仕上がってから撮るのが基本です。工事前の写真を使うと、内見で見た部屋と印象が違ってしまいます。
▶ 完了時の写真を「次の入居時の記録」として残す
工事が終わった状態の写真は、次の入居者さまとの入居時の記録の土台になります。ガイドラインは、原状回復を退去時(出口)だけでなく入居時(入口)の問題としてとらえ、入退去時に物件の状況をよく確認しておくことがトラブルの未然防止に有効だとしています。今回の完了写真を、次回の立ち会いの準備として保存しておきましょう。
▶ 連絡の窓口を減らす
クリーニング、クロス、床の補修を別々の業者に頼むと、日程の調整と「前の工程が終わったか」の確認がそのぶん増えます。窓口が1つであれば、工程の段取りは業者側でまとめられます。部屋の状態を見て何から手を付けるかの考え方は、賃貸の空室が埋まらないのはなぜ?原状回復で見直せる範囲と順番にまとめています。
よくあるご質問
▶ Q. 入居時のチェック表や写真が残っていません。
A. ガイドラインは、長い賃貸借では記憶だけではあいまいになり、損耗の箇所や時期をめぐってトラブルになりやすいとしています。記録がないと、どの傷みが入居後にできたものかを確かめにくく、話し合いに時間がかかりやすくなります。今回は、前回の工事の請求書や写真など、手元に残っている記録を探してから話し合いに臨みましょう。あわせて、今回の完了写真とチェック表を残しておけば、次の入居からは記録がある状態で始められます。
▶ Q. 立ち会いの前に、業者に部屋を見てもらうことはできますか。
A. 入居中の部屋に入るには入居者さまの了解が必要です。退去前に見るのが難しい場合は、退去日がはっきりした段階で業者の現地確認日を先に押さえておくと、立ち会いから見積りまでの間を詰められます。
まとめ
退去立ち会いから募集開始までを短くするコツは、工事を急がせることよりも、待ち時間を生まない段取りにあります。立ち会いの前に契約書・入居時の記録・前回の工事記録をそろえ、当日は誰が見ても分かる写真を残し、見積りと発注は箇所ごと・部屋ごとに分ける。この3つで、話し合いと発注の判断にかかる日数を詰めやすくなります。
新和工業はうすりぺいるは、原状回復のクリーニング・クロス張替え・床の補修・建材リペアを、外注を挟まず自社の職人が施工しています。見積りは工事ごとに内訳を分けてお出しし、写真での状況共有にも対応しています。富山県全域に対応しています。原状回復の詳しい内容は原状回復、管理会社さま・複数戸のご相談は業者・法人のお客様へのページにまとめています。
出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」第1章(図5 原状回復の費用算定の手順(イメージ)、入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト(例)、別表4 原状回復の精算明細等に関する様式(例))および国土交通省ウェブサイト「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』について」。2026年9月28日確認。本記事の該当部分は、これをもとに新和工業はうすりぺいるが要約・編集して作成したものです。国土交通省は、すでに賃貸借契約を結んでいる場合は契約内容に沿った取扱いが原則だとしたうえで、契約書の条文があいまいな場合や、契約締結時に何らかの問題があるような場合は、ガイドラインを参考にしながら話し合うよう案内しています。個別の負担割合は、契約内容と当事者間の話し合いでご確認ください。
